1.空室リスク
不動産投資の失敗事由で一番多いのは空室問題です。
ローンを組んで物件を購入したものの、賃借人がみつからなければ返済だけが残ります。月々の返済とランニングコスト、自身の生活費の3重苦になれば投資どころの話ではありませんね。
では、空室の改善策としていくつか紹介します。
敷金礼金を0にして、借り手の初期費用を減らしてあげる
特に大学の近くのワンルームや大規模な工場の近辺など、単身者で賃借の初期費用を抑えたい借り手のニーズと合致します。
また、物件のグレードが低い場合、賃料も安さ目当ての借り手が多いため有効な手段です。
敷金はどうせ返却しますし、礼金も空室期間が短くできるのであればそこまで大きな問題ではありません。とにかくローンの返済を家賃収入で相殺することが最優先です。
リフォームして集客力と収益性を向上させる
リフォームすれば一時的には手元の出費がありますが、長期的に見れば収益の回収ができるケースがあります。
致命的に室内が汚く賃料を格安にしなければ借り手がつかない場合などにはリノベーションも検討してみましょう。
賃料格差の中間層を狙え
地域によっては、極端な築古か、新築マンションの2種類しか物件がないようなところがあります。経済成長期に大開発された故に、土地の余りががなくなり新しい建物が殆ど建てられずに平成を終えたような地域です。
いわば中間層の価格や賃料の物件がなく、一定の需要が宙に浮いてるようなケースですね。
そこで、開いた賃料格差の中間を狙ってリフォームしましょう。
新築ファミリーが25万前後、築古が15万の賃料なら、約20万の家賃を目指してリフォームするということです。
ボロ屋を買ってリノベーションしたら利回り20%なんて話も聞きますから、収益性上昇のためには周辺の相場に目を向けてみることが大切です。
リフォーム箇所の目の付け所
例えば、賃貸物件を探す時の要望で一番多いのはバストイレ別です。
まず、投資物件が築古の3点ユニットであれば、周辺のバストイレ別の物件と比べて家賃の差がどれほどあるかを調べましょう。
リフォームすればこの差分の家賃を高く設定でき、当然ながら集客力も上がります。後々の売却にもリフォーム分を乗せられますね。 ワンルームであれば150万円もかからずにバストイレ別に変更できると思います。
賃貸仲介と相談しながら、現状に比べてリフォームの方がメリットが多いようであれば検討してみてください。
OCから実需に変えて売り逃げる
OCのままの方が高く売れるとか売りやすいとか思い込んでませんか?
基本的に不動産は空室価格が1番高く、売りやすいです。
まず、OCを買うことができるのはローンの兼ね合いで投資家や法人のみに限定されます。
そうなると、OCのまま売り出すということは、少ない見込み客に加えて周辺の利回り競争に勝つ必要があり結構厳しいんですね。
その点、空室売りにすれば投資ローン客だけでなく住宅ローン客も集客できるため、買い手の幅が広がり売価も高くなります。
どうしても空室からのローン支払いが苦しいならば、逃げ切り売却を検討するのも1つの選択です。
サブリース契約には注意しよう
サブリースとは、相場賃料の7〜8かけでサブリース会社が投資家より投資物件を借り上げて第三者へ転貸するという収益モデルです。
投資家にとってのメリットは、賃借人を見つけなくてもサブリース会社から定期的に賃貸収入を得られるという点です。
管理の手間もかかりません。
ただ、本気で不動産投資で生計をたてるならばサブリースはやめておきましょう。
そもそも、相場の8かけの賃料収入でローンの返済やその他経費の支払い含めて収益性を保てる物件を私はほとんど見たことがありません。
相場額で貸すことができる物件ならばサブリース自体不要ですよね。賃借人が捕まらなくて困るならば不動産賃貸会社に賃料の3倍の謝礼金を払った方がよっぽどマシです。
サブリース会社に賃借人を見つけられて、投資家に見つけられないことはありません。
加えて敷金礼金も全てサブリース会社の取り分となります。それにもかかわらず、リフォーム費用や修繕費は物件の所有者持ちです。最初は良くてもいずれキャッシュフローが破綻する可能性があります。
ここまで辛辣な文章を連ねてきましたが、もちろんメリットを享受できるケースもあります。
投資物件を現金購入した老人で、管理やその他詳しいことがわからないし、収入は落ちてもいいから、手間を全て請け負ってほしいといった場合ならいいと思います。
もしそうでないなら、不動産投資の舵取りを全てサブリース会社に任せることになるハイリスクな契約だということを念頭に置きましょう。
2.金利リスク
基本的に、不動産投資ローンは基本的に変動金利で組むことになります。月々の返済額は景気の良し悪しに左右されますから注意が必要です。
いくら金利分は経費計上できるといえど、金利上昇でキャッシュフローが赤字に転落してしまえば投資自体を続けることが難しくなってしまいます。
2020年以降の金利は上昇するのか
単刀直入に、今後は金利上昇の兆しがあります。
私自身不動産業者なので銀行の方とも話をする機会が多いのですが、2019年の住宅ローンの最優遇金利が0.5%は異常です。
約10年ほど前はフラットでも金利は3%前後でした。それが、現在は当時の3分の1程まで下がっています。この背景にはアベノミクスや日銀の低金利政策が絡んでいますね。
金融機関からすると金利=収益であり、これだけ政策でダメージを受けた分の反発が必ずやってくるでしょう。
金利だけでなく融資事務手数料や保証料が上乗せされたりするかもしれません。
特に政権交代や日銀の総帥が変わる節目にはテコ入れがありますので、日経や東洋経済を利用して常に経済ニュースにアンテナをはっておきましょう。
金利変動は収益性でカバーする
大切なことは、金利の上昇を見込んでもキャッシュフローに余裕のある利回り物件を取得することです。
家賃10万に対してローンやランニングコストの支払いが9万円で、月々1万円のキャッシュみたいな収益計算での購入はリスキーなのでやめましょう。
現在の金利から+1〜1.3%程増えても手残りがあるような安全な物件の購入をすべきです。
また、空室や漏水などの予期せぬ出金に対応できなければ、不動産投資は簡単に頓挫します。
そうならないためにも、手元の資金はできる限り貯めておきたいところです。
3.賃料下落リスク
建物が古くなればそれだけ賃料も下落します。誰しも新しくて綺麗な建物に住みたいと思いますからね。
また、老朽化以外にも賃料に影響する要因がいくつかありますので紹介していきます。
都心は賃料が落ちにくい
日本六大都市など、都心は物件の資産価値が減りにくく賃料も落ちにくいです。
都心は人口が多く、ある程度の築古物件でも一定の需要があります。そのため、地方ほど賃料を下げなくとも借り手がみつかります。
例えば、東京23区の駅から徒歩10分以内の区分であれば、10年間で家賃の下落率は10%前後です。
新築時10万円で貸せた物件が、築10年経っても9万円で貸せる感じです。
さらに、代官山や目黒などの一等地であれば新築から20年程経っても家賃の下落率が10%以下も珍しくありません。
補足ですが、統計局ホームページ/平成30年住宅・土地統計調査 調査の結果によると47都道府県の中で唯一、東京の持ち家率が50%を切っています。
これだけ賃貸需要がある地域は他にありません。さすが日本の首都ですね。
地方は賃料下落が早い
一方、地方は都心より人口が少なく、持ち家が浸透しています。持ち家があれば、賃貸の需要は減るのでそれに伴って賃料の下落率は大きくなりますね。
水戸や宇都宮、高崎等の地方都市の区分でも10年で15%程は下落しますので注意が必要です。
特に木造アパートは築30年も経てば新築時と比べて約半分ほどまで家賃収入が落ちるイメージで構いません。
地方は賃料下落が激しい分、都心に比べて物件価格が安くローンを組みやすい傾向にあります。
比較的利回りも高く設定されていますので収益性は一長一短ですね。
主要施設の移転
有名大学や大きな工場など、人を集める施設の近くに投資物を持っていると集客に困りません。
よくあるのが、
- 大学と提携して借り手の紹介をしてもらえるケース
- 工場を持つ法人が一棟借り上げしてくれるケース
- 行政から生活保護者を紹介してもらえるケース
などですね。
しかしながら、それらの施設が移転や閉鎖されると強烈に収益が落ち込みますから注意が必要です。
そのため、主要施設と合わせてその他交通利便や生活環境が充実しているなどの2〜3本柱で需要を考えることが大切です。
4.相場変動リスク
リーマンショックは本当に悲惨でしたね。
当時は景気が急激に落ち込み、収入が減った人の住み替えや、馘首された人が賃貸物件から実家に戻ったりして空室物件が多量に生まれました。
空室が生まれれば大家はたまったもんじゃありません。
毎月ローンの返済とランニングコストが降りかかってきて、キャッシュフローは火の車。
逃げ切るために収益物件の売却を考えても不況じゃ買い手は見つからないし、見つかっても好景気時代に組んだ水増し融資分をひっくり返すほどの売却額には届きませんでした。
不況は最高の商機である
ただ、この未曾有の経済ショックの波に乗った投資家もいました。大量の手元金を貯めておいた方々ですね。
リーマンショックの問題は銀行が金を貸しすぎたことを発端にしており、当然それが弾けたあとには融資の引き締めが行わました。いわゆるサブプライム問題です。
融資が降りないとなると現金一括購入の買い手は神様です。
キャッシュフローが赤転落している投資家は一刻も早く物件を処分したいために、今では考えられませんが安売りの逆オークションみたいなことが起こっていました。
つまり、どの収益物件も相場が急落した時の底値で仕入れることができたのです。
特に都心で2008年に底値で購入した区分の価格は、2019年現在は当時の2倍近くまで膨れ上がっています。
売却益は数千万円にも及ぶでしょう。
何が言いたいかと言いますと、経済ショックの後は商機なのです。
株価と同じですね。東芝も急落した時から随分と持ち直しましたし、クリスマスの大暴落は今は見る影もなく相場を戻しています。
2020年以降に考えられる相場変動
今後考えられる相場変動の要因は下記の通りです。
- 2020年:東京オリンピック後
- 2022年:生産緑地問題
- 2025年:日本国際博覧会後
- 未定:ドイツ銀行問題
直近で一番の経済ショックを起こしかねないのはドイツ銀行ですかね。当時のリーマンブラザーズ銀行と同じことを繰り返しています。
しかも、負債総額は260兆円でリーマンショック時の4倍超です。もしもドイツ銀行が破綻すればリーマンショックを超える経済不況が訪れるでしょう。
5.告知リスク
入居人が室内で死亡した場合にはそれを次の所有者や賃借人に伝えなければなりません。これを告知事項といいます。
もしも告知事項があるにもかかわらず伝えなかった場合は、心理的瑕疵として損害賠償を請求されることがあります。
告知義務は、告知物件を購入して次の所有者に売却する際にも発生します。
告知事項の重さ
告知事項には内容の重さがあります。
殺人等事件性があるもの>自殺(練炭、焼死など)>自殺(首吊りなど)>老衰死
の順です。
やはり殺人等の事件性があるものは重く、老衰などの不可抗力は軽い傾向にあります。
告知による物件への影響
売買、賃料相場への影響ですが、殺人等は6かけ、自殺であれば8かけ、老衰は9かけといった具合です。
やはり、告知が重いほど売却、賃貸収入に影響します。
告知事項発生の季節や発見までの期間
夏場の告知はリフォームまで必要になるケースがあります。
センシティブな内容になりますので具体的な説明は省きますが、とにかく床や壁や建具にニオイや色がついてしまいます。
発見までの期間も延びれば延びるほど室内の状態は悪化しますので、入居者の入金が遅れたりポストが溜まり過ぎていたりと違和感を感じたら要注意です。
大体3カ月ほど放置されていた場合は、確実にクロス床など目に見えるものは新規交換する必要があるでしょう。
告知はどのように防ぐ?
正直なところ、告知事項に関しては対策の術が殆どありません。オーナーにとっては不可抗力であり、災害に近しいものがあります。
せめて、超高齢の方の入居は遠慮いただく程度が現状の唯一の対策です。
また、物件に告知事項がある場合は、「当該住戸に告知あり。詳細担当まで」といった内容が販売図面、賃貸図面に小さく書かれています。
見落とさず、担当に内容を確認しましょう。
6.災害リスク
地震や台風、火災で建物が損害を受けてしまい投資物件への入住が困難になってしまうリスクもあります。
災害は告知同様、不可抗力なので防ぐのが難しいです。
対応のポイントは、
- 購入前にハザードマップを確認する
- 保険に入る
の2点です。
ハザードマップとは?
ハザードマップは、自然災害が起こりうる地域を色分けしてあるマップのことです。浸水や土砂崩れ、津波などが該当しています。
ハザードマップ自体は、不動産が立地する市や区役所の都市計画課に行けばもらうことができます。
もしくは国土交通省が運営しているポータルサイトなどでも確認可能です。↓
災害リスクを減らすためにも、購入予定の不動産がハザードマップで災害区域に指定されているかを確認しましょう。
土地勘がない地域の物件を購入する場合は必須ですね。
木造は水災保険に入るべし
損害の修繕費を最小限に止めるためには保険に入りましょう。
特に戸建て投資の場合は、木造であるために台風や洪水などの水災の被害を受けやすい傾向にあります。
水災による保険料は他に比べて多少高額になりますが、土地が隣接する道路と比べて低い位置にある場合は入っておいて損はないと思います。
区分、鉄骨造は躯体が強い
木造に比べて、マンションや鉄骨アパートであれば躯体が強いため、水災や台風の被害を受けにくいです。
そのため、個人的には水災保険はあまりメリットがないように思います。ただ、余程の築古で屋上・外壁防水を行っていないような物件であれば水災保険を検討しましょう。
保険は安心を買う的な意味合いが強いので、災害における心配事を減らして投資に専念するためにも、できる限り加入しておくことをお勧めします。